今回の修理案件は、低速がやたらと重たく、加速が悪くなってしまったというジョーカー90の修理です。
それが、なったり、ならなかったり、と曖昧な故障らしく、現場修理ではなく、お引き上げで徹底的にやることにしました。
2ストのリード系エンジン搭載ということで、よく売れた車種でもあるので、パーツ流通は多い部類に入るのですが、なにせ古い。
25年は経ってる。
さすがにメーカーの生産中止も多々あります。
ただ、駆動系パーツに関しては、他の車種との流用パーツも多いので、それでも生産中止品は多くはないはず。
いずれにしても診断です。
セルを回してみると、ウィーン、ウィーン、ウィーン、キュル、ウィーン。
滑ってますね。
この現象、セルモーターがピニオンギアに伝達し、クランクギアに伝えるのですが、ピニオンギアのギア部が滑っている音です。
ウィーン、ウィーン。
あ~ 交換だわ~ と思って、ホンダに照会取れば、ブブー。
早速、生産中止でした。
しゃーないんで、徹底的に掃除して動きを良くするしかないですね。

プーリーを外すと、その奥にクランクギアがあるのですが、これが、圧入されているので、こうしたフライホイールプーラーという工具が無いと外れません。
これ、どーしたんだっけかな~?
だいぶ昔に手に入れた工具で、ホンダで頼んだものかどうかは忘れましたが、汎用のモノでも、4箇所でオフセットカラーが付けることができるモノであれば、代用できます。

そこまでキツく圧入しているわけではなく、テーパー状のクランクシャフトに差し込んである程度なので、すっと抜けるはずです。

これがピニオンギア。
親指のギア部は、セルモーター側。
下のギア部が、クランクギアに噛む構造なので、ココが滑っているわけです。
もっとひどい状態のモノでも多くあるので、これぐらいの経たりならば、掃除でなんとかなるかも。

まずはガソリンでドボ漬け。
内部の汚れもキレイに取り除き、最後にラスペネ漬け。

キレイになったでしょー。
脇に「GW3」ってあるのが、リード90・ジョーカー90・ブロード90・キャビーナ90のパーツ型番だと思ってイイでしょう。
これでピニオンギアの清掃は完了。
でも、これは、セルの滑りを解消しただけに過ぎませんので、加速が悪いって言っていた方をやらなければなりません。
まずは、プーリー交換。
減りまくっていたわけではないのですが、パーツが出なくなるとイヤなので、交換することにして、ついでに、標準ローラーウェイト13g→10.5gに変更することにしました。
ウェイトローラーを軽くすることで、低速から高回転で回すことができるようになります。
つまり、2ストのパワーバンド領域に低速から持って行くことができるという理論上の考え方。
実際は、クラッチやベルトのコンディションとのセッティングになるので、そうそう加速が良くなるわけではありません。
ただ、他に要因がある場合は、ただ単にエンジン回転が回っているだけで、加速感が無いようなバイクになります。
それは、後で試乗してからのお楽しみです。

あとはクラッチですね。
減ってますんで、ストップ&ゴーが多いんでしょうね。
まだそこまででは無いんですが、やはり、これもメーカー欠品になると厄介なので、早めに交換しておきます。

クラッチナットを外す、大きなソケットも必要です。
ナットを外す時に、センタースプリングの力でびよーん!って飛びまくるので、注意が必要です。
足で踏んづけながらやりましょう。






はい、これでクラッチ交換も完了。
ただ、クラッチシューの交換をしたからと言って、加速が良くなるわけではありません。
まったく無くなってガリガリやってる個体だと劇的な差が感じられるでしょうが、そこまでガン減りしてなかった、今回の個体は、おそらく体感できないレベルだと思います。
ただ、こうして、すべての駆動系パーツを洗浄しキレイにして、動きを良くして、組み上げるわけですから、コンディションはアップすることは確実です。
試乗した限りでは、ローラーウェイトを軽くしたから低速トルクが増えたわけではありません。
高回転型になったような感じです。
信号待ちをしていると、カブる現象も出ているので、圧縮比低下が根本要因かも知れませんね。
とは言え、確実に駆動系の寿命は伸び、加速感も多少なりとも復活し、セルの滑りは最小限に抑えられ、お客様も満足の様子です。
2スト原付バイクの修理は、ガッチャは得意な方ですが、それでもメーカー生産中止には泣かされます。
とにかく、修理に踏み切るならば、一刻も早いほうが得です。
2ストバイクで、長く乗りたいと思っているユーザーがいれば、お早めに修理依頼をお願いします。
金額は多少張りますので、それは覚悟して下さいね。
今回のご依頼:東京都中野区 駆動系オーバーホール 46,000円




