人気のズーマーですが、ここへ来て、初期型などはもうかれこれ20年は経っているロングセラーバイクなんですよね。
途中、インジェクション仕様に変わるというマイナーチェンジは行ったモノの、基本設計はほぼ同じ。
ただトゥデイやジョルノなんかに比べ、まだまだジャパニーズイズム残る、国産バイクの匂いが色濃く残っている希少車種です。
さて、今回入庫のズーマーですが、エンジン故障です。
実は、もうすでにお客様の手を離れ、ガッチャが保管していた車両です。
今回、代車が必要になりましたので、起こさなければならない必要性があり、修理をしています。
エンジン故障にもいろいろありますが、まずはこのエンジン音を聴いて頂きたい。
すんごい音でしょ?
これはどこが悪いか?というと、クランクベアリングの劣化で鳴っている音なんです。
ということで、今回の修理作業は、クランクベアリングの打ち替え案件となります。
数ヶ月前からゴーっとエンジン音がして来て、日に日にその音が派手に大きくなって来たそうです。
今では、文字に起こせば、ゴロゴロガシャガシャ って感じですかね?
そうした異音に関しても、ガッチャとのお電話でお聴きする重要なポイントになりますので、模写というモノは、トラブルを人に伝えるのに、ひじょうに重要なアイテムとなります。
今回のお客様は、模写がうまかったです。
お電話ですぐにクランクベアリングの故障ということがわかりましたので。
ただ、新しいバイクを買われたいということで、ガッチャに処分を依頼して来た車両です。
さて、作業に戻りますと、ズーマーの場合、フレームにセンタースタンドが装着されておらず、エンジンを下ろすと車体が自立しなくなります。

画像を見ると一目瞭然ですよね。
つまり、車体フレーム側を天井から吊る必要性があります。
いや、他にイイ方法があるかも知れませんが、スタンドは邪魔だし、積み下ろしの際に高さ調整をしないとならないので、この方法がベストなんです。
コツとして、フロントタイヤは地面?に押さえつけておかないと、一緒に上がっちゃいますからね。
エンジンのカチ割り方は、今回レクチャーブログでは無いので、割愛します。
エンジンを下ろし、オイルやクーラントを抜きます。
クランクケース側とエンジンブロック側に分離。
エンジンブロックは、シリンダーが腰上と一体というわけのわからん構造なのですが、変に作業しやすいのも事実です。
腰下が上下分離式 と言ったほうが正しいかも知れませんね。
ま、たしかに空冷4ストエンジンとは違い、シリンダーが焼けていることが少ないエンジンで、躯体交換というのが滅多に無いというのも、このエンジンの特徴ではあります。
今回の作業ももちろん、ベアリングのみ交換です。

これはちょうど古いベアリングを取り外したところです。
万力は、ほぼ載っけてるだけで、ギューギューっと締め付けてロックしないでイイので。
クランクシャフトに傷が付いてしまいますから。
外した、異音を放っていたベアリングですが、外した後に手回しで、その異音が確認できるか?をやってみました。
我々プロが判断すると、これはエンジンが掛かった時に、かなり大きな音がする!という判断が出来るレベルの異音を感じます。
手回しで音が鳴るかどーか?を判断できないと、もう片方が鳴っているかどうかの判断もできません。
あ、言い忘れておりましたが、クランクベアリングはピストンを真ん中に置いて、左右2個、必ず装着されております。
その左右、どちらのベアリングを鳴っているかを判断しなければなりません。
もちろん、両側を交換するのが一番イイ方法ではありますが、使えるもんは使う。これが低コストで修理する商売としての修理技術です。
そして、今回のこのズーマーですが、前述しましたが、直した後は当社の代車として活用を考えています。
最低限のパーツの交換で行きます。
つまり、今回交換するパーツは、クランクベアリング1本。
あとは、すべて外したまんま、既存のまんまで行きます。
本来、お客様の修理車両であれば、エンジンガスケットや、オイルシール、ウォーターポンプパッキンやら、一度外したら交換しないとならないパーツがごっそりあるのですが、今回は全部、既存でやっちゃいます。
クーラントもオイルも抜いたモノはもう一度リサイクルします。
手回しのテストでは、進行方向向かって左側のベアリング、つまり、クランクケース側のベアリングが音を放っていることが判明したので、このベアリング一本を交換します。
交換に際してベアリングを差し込みする工具は、クラッチスプリングコンプレッサーを使います。

原チャリのクラッチを分解する時の工具ですが、クランクベアリングを取り付けるのにベストなんですよ。
ホンダ二輪専用工具で検索してみよう。
使用する時はしっかりオフセットを考えて挟み込むモノを入れてあげて下さい。
ガッチャは、古いベアリングなどを挟み込んでオフセットをさせました。
クランクベアリングを抜き差しするのに、ハンマーで引っ叩いたり、コンロやバーナーで炙ったり、そんなことをしなくて大丈夫です。
そもそも、この程度のクリアランスがある装着は、「圧入」とは言わないので、前述の熱入れなどはまったく不要です。
4ストオイルを塗って締め込めば、くっくっと入って行きます。
エンドまでしっかり差し込んだら完成。
あとは、元通り組み上げてエンジンをかけてみよう!
はい、すっかり直りましたね。
このあとに、エンジン内コーティングを施して完了です。
エンジンオイルに添加するタイプのモノですが、密閉性もアップするので、ガスケット交換を省いた時にはやるっきゃありません。
あ、良い子はマネしちゃダメですよ。
消耗パーツはしっかり交換しましょー